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今日のできごと

新入生のオリエンテーションのような毎週のコース(主に各分野の先生方が研究を新入生向けに説明する)が金曜にあるんですが、それの一環で今日は科学者倫理の講習がありました。
Ethicsです。
最初に一般的な説明があったあと、具体的な例(思考実験)を元に話し合いがありました。
例というのはごく簡単にまとめると以下のようなものです。

ある人が、大学院を修了してよその大学に研究職を見つけた。
大学院時代は最初は3つのテーマを並行してやっていて、そのうち成果が出てきた一つに集中して研究を続けた。
で、その人がよその大学に移ってから、大学院生時代に途中で捨てた2つのテーマの研究の続きをやりたいと思った。
で、もとの大学院の指導教官のところに行って自分の研究ノートを引き取りたいと言ったら、指導教官に拒否された。ノートは研究室のものだし、新しい大学院生にその研究テーマの続きを与えようと思っていた。だから、ノートは渡せない、ということ。
悩んだその人は友人に相談したら、今度こっそり研究室に行ってノートを拝借してコピーしてみたらどうかと示唆された。
さて、その人はノートをコピーするべきか、否か。

というお話。本当の話はもっと長い。どの研究に研究費が出ていて、研究報告にどの成果が載って・・・などなど細かい。
新入生にアンケートを取ったら、コピーすべき10人、すべきでない35人でした。

Ethicsの講師の人の目的はこの問題に対してYesあるいはNoの答えを与えることではなく、こういう問題に対面したらどのような対処していくのが良いのかについて教えることにありました。(だから、結局Yesが正しいともNoが正しいとも言っていませんでした。)
法的にはノートの所有権は大学にある、ということには注意してください。

なんだか印象に残っている部分は、講師の人が
「こういう教授を指導教官にしたいと思う人はいますか?」
と聞いて、誰かが手を上げて、
「その教授は研究費も持ってたんだし、良いんじゃないのか」
みたいに答えて、講師の人が
「そう。結局その人(話の主人公)もよその大学に研究職を見つけられてるんだし、完全に悪い人のわけがない。何かの理由でその日たまたま機嫌が悪かっただけかもしれない。」
と言って、こういうことが誰にでも起き得ることだということを強調していたことでした。

まあ、なんというか、なかなか面白い講義でした。

そういえば、昨日オンラインでも倫理の講習を受けました。
こちらは州が要請しているものです。
僕の身分は一応イリノイ州に雇われている公務員なので、公務員としての倫理の講習が必要なんです。これには、例えば僕から利益を受けうる他人からプレゼントをもらったときにどう対処しなければならないのかの説明などがありました。面白かったのは、プレゼントをもらったときの可能な対処法の一つに「同額程度をチャリティーに寄付する」というのがあったことです。
by t_oz | 2006-10-21 15:25